50歳から75歳未満を「白秋世代」と定義し、人生の後半戦も存分に楽しむことを当たり前にするといったビジョンを掲げて活動している「白秋共同研究所」。
2020年秋からスタートした当プログラムの最終研究会に参加してきました。
白秋共同研究所とは?
人生100年時代後半の50歳からの“人生の収穫期”である白秋期。この期間をどう実りあるものにしていくか━━。
「自由」と「自分のモノサシ」を手にした大人たちが、“会社”という枠をこえ“公私融合”で仲間とともに自分たちの生き方・生き甲斐に向き合っていくことを、企業コンソーシアム型で取り組んできたのが白秋共同研究所です。
神戸市でWell-beingな事業開発を手掛ける株式会社Wが研究所のオーナーを務め、所長は予防医学研究者として知られる石川善樹氏が務めています。
同研究所は「人生100年時代」を見据え、「白秋世代」に当たる50歳から75歳未満の人々に着目。この世代の人々が望む商品やサービスを開発し、新市場を開拓、ひいては50歳代以上の人々がより人生を楽しめる社会の創造を目指しています。
参加企業はエイチ・ツー・オーリテイリングやシスメックスなどの大手企業をはしめ、公共団体やベンチャー企業など35社。約70人の社員(研究員)が活動に取り組んできました。
・白秋共同研究所”仕掛け人”インタビュー
https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/mirai/h_vol86/
白秋共同研究所の歩み
私が当プロジェクトを知り、関わり始めたのは2022年末ごろから。ごく一部ではありますが、最終回までの歩みを簡単にご紹介します。
白秋共同研究所ホワイトペンギン講座スタディツアー
2023年の2月には香川県三豊市を視察。「やりたい」を形にできる土壌が育まれており、市内外から多くのプレイヤーが集まる同地域で立ち上がったプロジェクトの様子を見学してきました。
プレイヤーの方々はもちろん、彼らに伴走しているプロデューサーの方とも交流。最終プログラムではそれらの学びをもとに、自分たちのプロジェクトにどう生かしていくかを考え、振り返りを行いました。
白秋共同研究所ホワイトペンギン講座スタディーツアーの詳しいレポートは以下のリンクから。
・白秋共同研究所ホワイトペンギン講座スタディツアー
(前編)
(後編)
企業における、50歳からのキャリアデザインを考える
2023年3月にANCHOR KOBEにて開催された、神戸商工会議所との合同企画であるスペシャルセミナー「企業における、50歳からのキャリアデザインを考える」。予防医学研究者であり、白秋共同研究所所長の石川善樹氏を迎え、企業における50歳からのキャリアデザインや、これまで関西で行ってきた取り組みの事例について学びました。
・イベント詳細ページ(Peatix)
https://peatix.com/event/3487073/
石川さんからは、心身ともに満たされた状態を表す概念「well-being」について説明がされ、これまでのデータをもとに「人生の充実や将来への希望をつくるのは収入ではなく居場所の数」であることが語られました。
・<参考資料>well-beingについて
https://ideasforgood.jp/glossary/well-being/
・<参考資料>「幸せな人生を送るために必要なもの」ハーバード大学研究
https://dime.jp/genre/677664/
一つの会社、一つのコミュニティで過ごしていると、その肩書きを失ったときに自分を見失ってしまいます。さまざまなコミュニティに参加して多様なペルソナを形成する、健全な”多重人格”を持つ重要性は今後より注目されていくことでしょう。
白秋共同研究所「ホワイトペンギン講座」(最終回)
2023年3月に最終回を迎えた白秋共同研究所の第二期。会場は神戸市灘区に新たに誕生したインキュベーションスタジオ「SoWelu」。これまでの活動を通し、深まった自己理解や学んだ知識を振り返り、今後取り組みたいプロジェクトと併せてプレゼンで発表しました。
・Incuvation Studio SoWelu(Instagram)
https://instagram.com/incubationstudio_sowelu
振り返りの一環として行われたのは、自身の内面を絵に描いて表すといったユニークなワークショップ。研究員それぞれの世界観が真っ白なキャンバスに描かれ、言葉にとらわれない自由な想像力が形になりました。
これまでたくさんのワークショップに参加してきましたが、中でもアート系のワークは難易度がとても高く、狙い通りの効果が出た事例は数えるほどしかありません。明確な正解が無い中で「どう描くべきか」に囚われていると全く手が動かないのです。
しかし、研究員の皆さんは心から湧き出る「どう描きたいか」を拠り所とし、次々に作品を仕上げていました。おそらく、今日に至るまで研究所のさまざまなプログラムを経験し、自己理解や表現力が磨かれた結果なのでしょう。すんなり絵を描く皆さんの様子を見て、一人「すごい……!」と感動していました(笑)。
最終回では二つのグループにわかれ、これらの作品を用いながら第二期のプログラムを振り返り、発表を行いました。
一階では、スクリーンに資料を投影するプレゼンテーションを。
二階ではサークル対話の形で実施。あたたかい雰囲気に包まれる中、各々の発表とフィードバックが行われました。
参加者の発表では、研究所所長の石川さんのお話から学んだことや視察で感じたこと、マイプロジェクトを進める中での課題感や展望が語られました。
中でも個人的にめっちゃわくわくしたプロジェクトが「白秋大学」です。
好きや得意を生かし、お互いに学び合う有志の学習コミュニティ。誰もが先生になり、また生徒にもなれる。
こうした学び合う文化が醸成された地域では、プレイヤー同士が有機的に繋がり、お互いを支え合う関係が生まれています。スキルやノウハウを交換しながら、やりたいを形にしていく動きが広がれば、ここからどんどん面白いプロジェクトが生まれるかもしれません。
前ホワイトペンギン講座のスタディーツアーで訪れた香川県三豊市の「せとうち暮らしの大学」は、まさにそんな文化が育まれているコミュニティでした。
視察レポートでも書きましたが、生涯学習が遅れている日本において、こうした取り組みにはとても可能性を感じています。
生涯教育がまだ浸透していない日本においては、学校を卒業したら勉強は終わりといった風潮があります。でも、学校を出て社会でさまざまな経験を積み、色んな課題に直面してこそ学びは楽しくなるじゃないですか。
白秋共同研究所ホワイトペンギン講座視察レポートより。
地域に開かれた学校があって、年齢や性別にかかわらず個々人の興味関心や好奇心を満たす、あるいは広げるような取り組みがあるのって、とても豊かなことだと思います。
個人的な願望で恐縮なのですが、「白秋大学」の実現はめちゃくちゃ楽しみにしています。何か力になれることがあれば、ぜひ関わりたい!
諸先輩方のプロジェクトが形になることを、心より応援しています。
白秋共同研究所のこれから
2020年の秋から活動をスタートした白秋共同研究所。最終回では、廣岡さんより2023年5月を目処に任意団体から一般社団法人へ変更することが発表されました。
白秋共同研究所の取り組みは、ビジネス的な意義はもちろん、今後の豊かさを考え実践していく社会的意義のあるコミュニティ活動です。私自身、参加する度に「人生の豊かさとは何か?」を深く考えることができ、価値観をアップデートしていける貴重な機会になりました。同時に、マイプロジェクトに取り組む先輩方のイキイキとした様子を見て、こんな白秋世代を送りたいと未来に希望を抱く機会でもありました。
今後もこうした取り組みが継続され、世の中の価値観をアップデートするとともに、イキイキと輝ける白秋世代が多く輩出されると思うと、歳を重ねるのがとても楽しみです。
私たちの世代が白秋期を迎える頃には、「白秋世代は人生の第二ステージ」であることが当たり前になり、個々人の可能性をさらに開花させられる社会になっていることを心から願っています。
━━━━profile━━━━
兵庫県を拠点として活動している編集ライター、カメラマン。大学卒業後、小学校教諭、塾講師、保育士を経験。2019年からは合同会社hyphenに転職し、コワーキングスペースmocco姫路スタッフ、コワーキングスペースmocco加古川の立ち上げに関わり、コミュニティマネージャーとして活動。その後兵庫県播磨地域の情報誌『まるはり』の編集・取材フォトライターを経て独立。
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