兵庫県姫路市にあるフリースクール「フリースクールのら」にて、オンラインフリースクールchoice主催のイベント「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」の第5回を開催しました。
オンラインスクール「choice」について
兵庫県加古川市を中心に、不登校児童・生徒を対象とした「未来を選び取る力を育てる」オンラインフリースクール。仮想空間「ovice」とICT教材「eboard」を使用し、オンライン上で子どもたちに学習指導、居場所づくり、探究型学習やクリエイト活動などの学びの機会を提供しています。
・オンラインフリースクールchoiceとは?
https://lit.link/onlinefreeschoolchoice
・【兵庫県・加古川市】不登校児童・生徒を対象としたオンラインフリースクール「choice」を始めます。
https://ropeth.com/2023/05/08/choice-edu/
「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」とは?
<こどもの社会環境を考えるWORKSHOP>は、子どもたちに対する権利の保障を中核とする包括的な支援「居場所支援」と呼ばれる取組について、地域での情報交換会を行い、共に学び、共に繋がり、こどもたちの笑顔を作ることを一緒に考えるイベントです。
主催:オンラインフリースクールchoice
・第1回イベントレポート
【兵庫県・加古川市】「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」@ON THE HILL
・第2回イベントレポート
【兵庫県・稲美町】第2回「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」@くにおか公会堂
・第3回イベントレポート
【兵庫県・加古川市】第3回「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」@ホームスクール「こどり〜む」
・第4回イベントレポート
【兵庫県・三木市】第4回「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」@S-BASE
フリースクールのら
第5回の会場は兵庫県姫路市にあるフリースクールのらさん。「個々に自分らしく自立して生きる」を理念にしており、不登校のこどもやそのご家族へのサポートのほか、自然体験やマルシェなど、様々な経験や多世代との交流を通してしなやかな心を育てる取り組みを行なっています。
教室の裏には畑が広がっており、野菜の栽培体験や採取、採れたて野菜を使った野外炊飯、養蜂といったさまざまな自然体験ができる環境が整っています。
また、教育活動だけにとどまらず、地域での関係機関との密な情報交換や連携、保護者を対象にした不登校親の会なども実施。HPやSNSから気軽に問い合わせることが可能です。
・フリースクールのら(HP)
https://freeschoolnora.studio.site/
・フリースクールのら(Instagram)
https://www.instagram.com/freeschoolnora2024/
「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」イベントレポート
オンラインフリースクールchoiceを立ち上げたと同時にスタートした「こどもの社会環境を考えるWORKSHOP」。毎回多くの教育関係者や福祉、行政関係者にご参加いただき、情報・意見交換を行ってきました。実際に日々こどもたちが学んでいる環境で開催することを大事にしており、今回は兵庫県姫路市にある「フリースクールのら」さんをお借りして実施しました。
冒頭はこれまで同様、当イベントの趣旨説明と主催である私たちの事業「オンラインフリースクールchoice」の説明から。最近全国各地でオンラインを用いた居場所づくりや学習指導の事例が出てきましたが、兵庫県内では未だ珍しく、興味関心を持って聞いてくださって嬉しかったです。こうしたICT技術を活用した取り組みが広がり、当たり前になってほしいですね。
続いては参加者の自己紹介。それぞれが取り組んでいる事業および活動と併せてご紹介いただきました。第1回から第5回まで続けてご参加いただいている方も、今回が初参加の方も、各人が熱い思いと強い使命感を持って引き続き社会課題に向き合っていることがわかりました。
播磨地域という限られたエリアの中であっても、お互いの活動を知らず、横の連携は未だ十分とは言えません。こうした場でお互いを知り、少しでも協働のきっかけになれば嬉しいです。
そしていよいよメインプログラムへ。前半はフリースクールのら代表の坂本 邦江さんより、スクールの活動紹介や施設の案内をしていただきました。
女史のお話で課題に挙げられたのが、現場スタッフの人手不足。発達に特性のある児童や指導に配慮が必要な児童がおり、全員が同日に登校するとマンパワーがギリギリになるとのことでした。のらさんは教室や校庭(農園含め)が広く、さまざまな体験活動をできる環境が整っている一方で、同時多発的にプログラムを実施するとなると、児童生徒全員に目を配るのはなかなか難しそうです。現状、スタッフのほとんどがボランティアで、採用や研修面でも課題を感じていると話されました。
たとえ環境やハードが整っていても、現場スタッフの数や質が足りていないと場の持つ力を最大限引き出せず、児童生徒の学びにつなげられません。これはどのスクールも同じような課題を抱えており、以前神戸市で開催した「教育の未来を語り明かす会」では、「子どもと関わる人の学び・育ち」がテーマに設定されていました。
・【レポート】子どもと関わる人の学び・育ちとは?〜教育の未来を語り明かす会vol.8〜
https://note.com/bukki_/n/n932644231100
スタッフがボランティアである以上、高い資質・能力を求めるのは難しくなります。善意から参画してもらっている手前、要望を強く訴えるのもなかなか気が引ける。どうすれば質の高い教育を児童生徒へ届けられるか。議論を進めるにつれ、課題はやはり財源と認知度へと収束していきました。
これまでは時間を区切り、後半のワークショップで課題共有を行うスタイルで進めましたが、今回は参加者同士が自然と意見やアイデアを出し合い、シームレスに次のプログラムへ移行。それぞれが互いの課題に真剣に向き合い、解決を目指して互いの知見を持ち寄る様子が見られてとても良かったです。
スタッフ不足については、参加者から「人が余っている他機関と協働してはどうか?」といった意見や、「そもそもキャパ以上の児童生徒を受け入れない」といった選択肢が提案されました。また、実際に協力を得られそうな機関の情報や、財源となる補助金・助成金情報なども積極的に交換され、課題解決に向けて動き出しそうな熱量が生まれていました。
認知度については私から一言。以前近畿大学の講演で使用したデータを用い、「支援についての認知度は高いが利用につながっていない」という実態について話しました。
課題は認知度にあるのではなく、知ってから利用に至るまでのプロセスにあるのではないか?というのが私の考えです。HPの情報が整っていない、チラシに必要な情報が載っていないといった入口の問題に加え、問い合わせの難しさや手続きの煩雑さといった部分に課題があれば、利用まではなかなかつながりません。UIやUX、カスタマージャーニーを見直す必要があると話しました。ここはかなり高度な専門性が求められるので、独学で進めるよりプロの力を借りた方が早いかもしれません。
これまで複数回にわたって開催してきた当イベントですが、会を重ねるにつれ横のつながりが強くなり、ワークショップで出てくる課題もどんどん高度化してきています。とはいえ、新たに出てきた人手不足やスタッフ教育の課題に加え、資金や集客の面は未だ多くの課題が残っており、どこも困難を抱えていることがわかりました。
アウトリーチの大切さ、そしてその先の利用に至るまでの導線をいかにわかりやすく引くか。当スクールも実践を繰り返しながら知見を積んでいき、各スクールにシェアできるようにしていきたいと思います。
今回ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。当日の気づきや学びをそれぞれの場に持ち帰り、より良い教育、居場所づくりに活かしていただければ幸いです。
━━━━profile━━━━
近畿圏を拠点として活動している編集ライター、カメラマン。大学卒業後、小学校教諭、塾講師、保育士を経験。2019年からは合同会社hyphenに転職し、コワーキングスペースmocco姫路スタッフ、コワーキングスペースmocco加古川の立ち上げに関わり、コミュニティマネージャーとして活動。その後兵庫県播磨地域の情報誌『まるはり』の編集・取材フォトライターを経て独立。2024年3月より大阪・福島のコワーキングスペースGRANDSLAMのコミュニティマネージャー。
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