大阪府・福島にあるコワーキング・イベントスペース「GRANDSLAM(グランドスラム)」にて、言葉と文章を愛する人たちの集いである、「ことばとこころとからだ vol.5」を開催しました。
会場情報【コワーキング&イベントスペース『GRANDSLAM』】
「成長・共創・つながり」という3つのコンセプトを軸に運営している、2019年8月設立のコワーキングスペース・イベントスペース GRANDSLAM。快適な作業環境を提供するだけでなく、学べるイベント、つながれる機会の創出などを通し、関わる人たちのビジネスの可能性を広げ続ける進化系スペースです。
・コワーキング・イベントスペース「GRANDSLAM(グランドスラム)」HP
https://grandslam.osaka/
・「GRANDSLAM(グランドスラム)」紹介記事(note)
https://note.com/gsmp2019/n/n3e443736e353
「ことばとこころとからだ」イベント概要
「言葉や文章を愛する人たちと、一緒に楽しく語りたい!」
そんな想いから生まれた当イベント。
集まるのはライターや作家、エッセイスト、俳人、作詞作曲家、ナレーターなど、文章に関わるお仕事の方々はもちろん、純粋に文章や言葉が大好きな人たち。
本や新聞記事、エッセイやネットのコラムなど、お互いの好きな文章を紹介し合ったり、テーマに沿って文章を書いてみたり、「楽しく書く」をモットーに毎月遊んでいます。
・ことばとこころとからだ詳細
https://ropeth.com/kotoba-kokoro-karada/
「ことばとこころとからだvol.4」イベントスタッフ
・中野 広夢(なかの ひろむ)
兵庫県を拠点として活動しているフリーの編集ライター、カメラマン。大学卒業後、小学校教諭、塾講師、保育士を経験。2019年からはコワーキングスペースのコミュニティマネージャーとして活動。その後兵庫県播磨地域の情報誌『まるはり』の編集を経て独立。
Twitter:https://twitter.com/ropeth
Instagram:https://instagram.com/ropeth
・前田 岳人(まえだ たけと)
大阪堀江・心斎橋のパーソナルジム「W-GYM」の代表トレーナー。医師から学べる運動指導者向けオンラインサロン「CRACK」主宰。自著にネット小説『ジムに入会したら国を救う破目になった』がある。
Twitter:https://twitter.com/maetake88
Instagram:https://instagram.com/maetake0530
これまでの「ことばとこころとからだ」
【大阪・福島】ことばとこころとからだvol.1@GRANDSLAM(グランドスラム)
・イベントレポート
https://ropeth.com/2022/12/17/grandslam-kokorotokotobatokarada1/
【大阪・福島】ことばとこころとからだvol.2@GRANDSLAM(グランドスラム)
・イベントレポート
https://ropeth.com/2023/01/21/grandslam-kokorotokotobatokarada2/
【大阪・福島】ことばとこころとからだvol.3@GRANDSLAM(グランドスラム)
・イベントレポート
https://ropeth.com/2023/02/28/grandslam-kokorotokotobatokarada3/
【大阪・福島】ことばとこころとからだvol.4@GRANDSLAM(グランドスラム)
・イベントレポート
https://ropeth.com/2023/03/26/grandslam-kokorotokotobatokarada4/
「ことばとこころとからだvol.5」イベントレポート
2022年末からスタートした、言葉と文章を愛する人たちが集うコミュニティ型イベント「ことばとこころとからだ」。第5回はいつも参加してくださる常連の方に新たな参加者を迎え、4名で開催しました。
<前半>今月出会った素敵な文章の紹介
イベント前半は、各々が今月出会った素敵な文章を紹介。
パーソナルトレーナーでありアスリートでもある前田さんからは、禅の考え方や言葉をスヌーピーの漫画とともに記した『心をととのえるスヌーピー』が紹介されました。
これまでの選書からは考えられないまさか過ぎるテーマの本の紹介に一同困惑(笑)。本人曰く、「昭和を中心に古い本ばかりを紹介してきたから、ここでちょっと変化球を投げようと思って」とのこと。書店の平積みされた新書から、「普段選ばない本を」と令和ど真ん中の本を選んだそうです。
章ごとにテーマが設けられており、「現在を大切に」「人と比べない」「思いやりを持つ」といった、人生において大事な考え方を、禅の言葉とスヌーピーのワンシーンを用いて紹介されています。前田さんのおすすめの読み方は、「前から全てを読んでいくのではなく、辞書的に気になる部分を拾い読みしていくこと」だそう。
本書の中にあるテーマのひとつ、「貴重なひとり時間」はまさに今回の執筆課題のテーマと一緒だったので、その箇所について教えていただきました。
書かれていた言葉は「閑座聴松風(かんざしてしょうふうをきく)」。古の時代、静謐な茶室内で松葉が風に揺れるささやかな音が響くことで、静寂の奥深さを味わってたそうです。静かな環境に一人、聞こえていくる音に耳を済ませることで、本当に大切なことを聞き逃さずにいられる。そんな大切さを語っている言葉に、一同「ほー」と感心のため息が漏れていました。
続いて、心理学を専門にしているしろくまさんからご紹介いただいたのは、エーリッヒ・フロム著『聴くということ』。
フロムと言えば、名著『愛するということ』で知られる精神分析学者。自著『生きるということ』において、何を持っているかで幸せを測るのではなく在り方によって幸せを測るべきだとする、「持つことの幸せ(Having)」と「在ることの幸せ(Being)」を分けた考え方を示したことでも有名です。
「傾聴」に興味関心を強く持っていたしろくまさんにとって、どストレートなタイトルだったため今回購入。この場でご紹介いただきました。
中でも印象的だったのはフロムの考える聴く姿勢。彼はただ単に話を聞くのではなく、相手の話をイキイキと追体験するところまでいけば「聴いている」と言えると書き記しています。しかし、能動的に聴こうとする姿勢は、ともするとこちら側の解釈が強く入ってしまい、相手の話をあるがままに受け止められない恐れがあります。心理学の領域において、その聴き方は大丈夫なのだろうかと少し疑問が残る部分だったので、また個人的にしろくまさんと議論したい……。
今回初参加の花子さんは、紀伊國屋じんぶん大賞2016の受賞作品である『断片的なものの社会学』をご紹介。
日常的に誰にも目を向けられないようなものに目を向け、無理に高尚化するわけでも編集を加えるわけでもなく、ただあるものをあるとして書き綴っている一冊。一般人へのインタビューが数多く載っており、特別な存在ではない人が特別でないままに暮らしている現実を紹介。筆者はそれが当たり前にあることに思いを馳せ、湧き上がってくる想いがあると記しています。
「何でもないことにロマンチックを感じる」と花子さん。「話題にならず、何のドラマもない、ただの営みが行われていることに込み上がってくるものがある」と話します。
これには自分も強く共感しました。メディアの仕事をしていると、目立ちにくく、ストーリー映えしないコンテンツは見逃されがちです。でも、リアルってそこにこそあるので、ていねいに綴っていきたいんですよね。こうした本が世に出てたくさんの読者に渡っていることが、とても素晴らしく素敵に思いました。
最後は私ロペスから。「世界で一番短い物語」とされる、英語6語の物語をご紹介しました。
For sale: baby shoes, never worn
(売ります。赤ん坊の靴。未使用)
この6語の文章から背景にある物語が浮かんできませんか?未使用の赤ん坊の靴。なぜそのまま売られているのか。おそらく何か不幸があって、誕生できなかったか、亡くなってしまったんでしょう。生まれるはずだった子どものために用意した靴。売りに出したときの親御さんの気持ちを考えると、胸が詰まります。
たった6語でここまでストーリーを語れる。大事なのは文字量(コンテンツ)じゃなくて、文脈の濃度(コンテクスト)だということを伝えたくて、こちらの文章を紹介しました。
前半ここまで。例に漏れず、時間は軽く2時間超え。それぞれの愛が惜しみなく語られ、白熱した議論が交わされました。新たな発見がありつつ、自身の価値観の再認識にもなるこの機会。スタッフである自分自身、毎度本当に楽しませてもらっています。来月はどんな発見、気づきがあるのか。すでに今から楽しみです!
<後半>課題執筆の講評会
休憩を挟んだのち、イベント後半へ。課題として設けていたテーマ「ひとり」についての執筆記事をお互いに講評し合いました。
以下に、レポートに掲載許可をいただいた参加者の作品をご紹介。ぜひご高覧ください。
・前田岳人さん『甘辛な人生物語』
https://kakuyomu.jp/works/16817330656218321492/episodes/16817330656218340006
前田さんが得意とする、リズミックでテンポの良い文体で綴られた今作品。一文一文が短く、全体の文章が長くてもスラスラと読み進めることができます。絶望の淵からの再生を描いたストーリーも素晴らしく、まるで、自分が物語の舞台となっている喫茶店にいるかのような引力を持っています。
前田さんの文章、毎回ハードボイルド臭さがあって大好きなんだよなー。次回作も楽しみにしています!実はこちら、以前の課題執筆作品(https://kakuyomu.jp/works/16817330653766468954/episodes/16817330653766480204)のスピンオフになっています。
・花子さん『ひとり』
今回初参加の花子さんの作品。前半の文章紹介で素敵な感性をお持ちの方だなと思っていましたが、書かれる文章もとても素敵でした。音のリズムがよく、声に出して読みたくなるような言葉選びが秀逸です。内容についても押し付けがましさがなく、フラットなスタンスで吟味ができる距離感が良いですね。
参加者同士でさまざまな解釈が生まれ、議論が起こるほど鑑賞を楽しめる作品でした。
・中野広夢(ロペス)『ひとり』
喧騒の残り香を脱ぎ、静寂に身を震わせながら、私は一人、日常の最果てに沈む。
前半で紹介したように、できるだけ短い文章でストーリーをつくることができないかと挑戦。外の世界で仕事仲間や友人たちと過ごし、ひとり帰ってきた真っ暗な部屋で感じる寂寥感について描いたつもりでしたが、皆さんの捉え方はさまざまでした。
状況説明をし過ぎると冗長になるし、かといって削り過ぎるとシーンのイメージができない。この辺りのバランスは今後少しずつ調整していきたいです。何にせよ、参加者の皆さんから刺激を受けて文学的文章に挑戦できたのは良い経験でした。来月も書こう。
対話は終始盛り上がり、惜しみつつも終了の時間へ。来月で半年を迎えますが、まだまだ語り足りません。回を重ねるごとにどんどん楽しくなっています。今月より来月、来月より再来月。より楽しく、より刺激的な場になるように、スタッフ一同精進していきます。
ご参加いただいた皆様、素敵な時間をありがとうございました。ぜひ来月も一緒に文章を愛でましょう。
次回「ことばとこころとからだvol.6」
来月開催される「ことばとこころとからだvol.6」については、以下の参加フォームからどうぞ。言葉や文章を愛する人と出会い、語られることを楽しみにしております。ぜひお気軽にご参加ください。
━━━━profile━━━━
兵庫県を拠点として活動している編集ライター、カメラマン。大学卒業後、小学校教諭、塾講師、保育士を経験。2019年からは合同会社hyphenに転職し、コワーキングスペースmocco姫路スタッフ、コワーキングスペースmocco加古川の立ち上げに関わり、コミュニティマネージャーとして活動。その後兵庫県播磨地域の情報誌『まるはり』の編集・取材フォトライターを経て独立。
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